岡山理科大学獣医学部

香港市立大学獣医学部訪問報告

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岡山理科大学獣医学部に課せられた課題の一つはアジアにおける獣医学の国際化を担うことである。アジアにおける獣医教育のネットワーク推進を目指して、2016年に設立された香港市立大学獣医学部を表敬訪問し、同大学の活動を調査するとともに、将来における連携の可能性を探った。今回は、栁井徳磨と藤谷 登の2名が参加し、旅費は国際獣医教育海外派遣にて支出して頂いた。

香港市立大学の本部(左)。

獣医学部が入居するビル。

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

学部長室にて。

1)香港市立大獣医学部長との面談
米国(コーネル大)から帰国したばかりの獣医学部長Dr. Michael Reichel氏と最初に面談した。同氏によれば、学士入学の獣医コース制度は順調に成長しており、コーネル大との共同博士課程からも卒業生が出ている。研究室・実習室も解剖学など建設が進野でいる。認証はオーストラリアの認証を獲得している。同学部長は、オーストラリアの大学の出身で疫学・寄生虫学が専門とのこと。
新設獣医大学の間の連携について、台湾の新設獣医大学などに関する意見交換を行った。この後、同学部長自ら、診断センターおよびメヂカルセンターの案内をして頂いた。

2) 香港市立大学獣医診断センター訪問
センター長はニュージーランド・マッセイ大獣医学部出身の病理学者Hill教授、獣医診断の研究室(獣医病理,獣医微生物,遺伝子診断,生化学,環境など)が香港市立大学の1階部分に設置され,昨年度から診断業務(病理,微生物,遺伝子など)が稼働している。Clientは市内の動物病院,水属館(Ocean Park)などである。検体(病理,微生物)は増加傾向にあり、香港市中、さらに中国本土,海外ではシンガポール、台湾からの診断依頼があり、将来的には東南アジアに進出することを目指している。保冷庫が設置された専用の運搬車4台を揃え,市内の動物病院や水族館を廻って,検査材料を集めている。

 

保冷庫を設置した検体の回収車

診断センター長のHill先生と

病理標本作製室①

病理標本作製室②

病理の検体数は一日あたり数十検体

(特に月曜日は多いそうである)

 

 

病理学診断研究室:剖検室,薄切室,診断室,資料保管庫を完備している。病理診断医は数名名,いずれもオーストラリア,ニュージーランドで訓練を受けたメンバー。

微生物研究室:3名のスタッフ。抗酸菌症やレプトスピラ症の症例が多いとのこと。日本のレプトスピラのワクチンに関する情報を求められた。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病院の玄関

3)アニマル・メディカルセンター
付属動物病院である同センターは,大学構内とは離れた市内繁華街に,最近オープンした。CTやMRIも備えた本格的な高度獣医医療に対応できる病院で、多数の専門医を含む多くの診療スタッフが働いており、救急救命センターが一つの目玉になっている。コーネル大学獣医学部のスタッフが定期的に滞在していると思われた。診療科目も多く、通常の診療科目に加えて、皮膚科、歯科、眼科などが設置されていた。

 

 

 

 

 

 

医院長との面談

専門医のパネル

手術室

CT室

待合室

受付

 

 

総合評価:本獣医科大学は,コーネル大学獣医学部の資金的,人的支援を得て,これにオーストラリア,ニュージーランドの大学からの人的支援も加わり,2016年に設立された欧米型の獣医科大学である。学生は順次入学しており,次第に専門科目の教育を充実させており、コーネル大学とは独立しているものの、協力体制を維持しているので、アジアにおける欧米型獣医大学の窓口としての役割を担っていると思われる。特にシステムの構築が素晴らしく、この点から我が国の獣医大学がかなり見劣りする。
 現在のところは,スタッフの数は限られるが,次第に採用を増やして充実した獣医学部の陣容を整える戦略と思われる。学生は,香港や東南アジア,中国本土からの応募を行っている。将来的には,アジアにおける獣医教育の強力なライバルの一つとなると考える。2016年設立以降,アジアで認知されつつあるように思われた。将来的に日本の獣医大学とも連携して,アジアでのネットワークには欠かせない大学の一つと考える。
  
香港市立大学との交流のメリットおよび問題点
 メリット:
   ・欧米式の獣医教育を体験できる。教育内容もシステマチックである。
   ・学生にアジア圏で英語での生活を体験させることができる。
   ・治安は比較的良い。
   ・研究面でも,高度で,共同研究も可能と思われる。

 問題点:
   ・香港でのホテル代が極めて高いこと。宿所の確保に困難が伴うこと。

4)Kadoori Farm and Botanic Gardenにおける野生動物救護センター訪問
将来の岡山理科大獣医・看護保健学生のための実習先として,同農園・植物園の野生動物救護センターを訪問した。同センターでは、多数の傷ついた野生動物を受け入れ、治療して、野が野外に話している。また、多くの学生ボランティアを受け入れ、英語で
研修が受けられるメリットがある。ただ、宿所の確保がおおきな問題になるとのことであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5)香港の政情について

中国政府の強引な管理・支配に反対した香港市民の運動の名残が郊外の駅などに見られた。今後とも香港における政状は流動的であるので、注意して見守る必要がある。
このような機会を与えていただき,関係各位に深謝したい。

 

 

 

 

報告者        
獣医学部 獣医学科
検査センター 教授

藤谷 登
野生動物学講座 教授
柳井 徳磨