伊豆 弥生准教授

研究内容

岡山理科大学獣医学部獣医学科獣医動物実験学講座の講座長に就任しました伊豆弥生です。

私は、もともと獣医臨床にはあまり興味がなかったのですが、多種多様な動物の違いを知りたいと思い日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)獣医学科に入学しました。博士課程では、念願であったクジラの研究を開始しました。クジラは、地球上で一番大きなほ乳類ですが、一生を水中で生活しているため、陸上のほ乳類の四肢にあたるヒレには体重を支えることがないという特徴があります。そこで、このような骨がどのようにして形成されるのか、クジラと他の陸生ほ乳類との比較研究を行いました。この研究を通じ、環境や体の大きさ、運動様式による違いが骨の形成に大きく影響を与えていることがわかりました。この研究は、現在においても私の研究の原点になっています。

 博士課程修了後、私は難治疾患研究所分子薬理学分野(野田政樹教授)のもと、遺伝子改変マウスを用いた研究を始めました。博士課程での研究において、骨形成に6型コラーゲンが関与していることがわかったので、6型コラーゲン欠損マウスの解析を行い、骨形成を担当している骨芽細胞の形が変化し、マウスの骨量が減少し、骨の質が悪くなることがわかりました(Izu et al. Tissue & Cell 2012)。2006年からは、コラーゲン研究の第一人者であるアメリカの南フロリダ大学医学部のDavid Birk先生のもと研究を開始し、12型コラーゲンについての研究を行いました。12型コラーゲンは6型コラーゲンと全く異なる分子ですが、12型コラーゲン欠損マウスにおいても、骨芽細胞の形状変化、骨量と骨質低下が認められました。また、12型コラーゲンは骨芽細胞同士のコミュニケーションを制御しており、これが骨量・骨質を制御していると考えられました(Izu et. al, J Cell Biol, 2011 )。私自身非常に驚いたことに、その後、ドイツケルン大学のManuel Koch先生との共同研究により、この12型コラーゲンと6型コラーゲンは、同じ疾患の原因遺伝子であることがわかりました( Zou and Izu et al, Human Mol. Genet, 2014 )。アメリカでの研究は、コラボレーションが多く、論文が受理された時には、コラボレーター達からおめでとうメールが飛び交い、非常に嬉しかったことを覚えております。

日本に帰国後は、6型コラーゲンと12型コラーゲンが複合体を形成し、骨芽細胞の形状やコミュニケーションを制御していることを見いだし( Izu et al. Cell Tissue Res, 2016 )、6型コラーゲンと12型コラーゲンを中心とした骨、腱、筋肉の制御機構について研究を行っています。

 岡山理科大学獣医学部は「動物とヒトの健康を科学する」というコンセプトのもと平成30年に新設されました。アメリカでは以前から、ヒトと共に生活するペットの生活習慣病や加齢性疾患がヒトと類似していることが指摘されています。獣医学の強みである比較動物学と、これまでの医学部での経験を活かし、動物とヒトが健康で幸福に過ごせるように少しでも貢献できる研究を行いたいと思います。

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