宇根 有美教授

研究分野

感染症、野生動物、エキゾチックアニマル、動物園動物、ミスフォールデング病、病の起源

研究内容

 病理学研究室は、不幸にして死亡した動物を解剖して、死因とそのメカニズムを明らかにする研究室です。「死を生かす」をモットーに、大きなものではゾウから、小さなものではオタマジャクシや昆虫までありとあらゆる動物を解剖して、その死因を明らかにして、今、生きている動物が健康に、長く生きられるようにすることを目的としています。死は究極の生命現象ですから、動物が、どのように病と闘ったのか、どのように負けてしまったのか、その過程と結果をありとあらゆる知識と手法を使って研究することは、生命の神秘そのものをみることと同じです。

病気の種類はたくさんありますが、この研究室では、主に感染症とタンパク質(アミノ酸)の3次元構造の異常(ミスフォールデング病)を研究しています。感染症は、別名伝染病ともいい、動物から動物へ、動物からヒトへも広がっていきます。迅速な診断(死因究明)はその伝染を阻止し、多くの動物の命を救うことになります。長年、私が研究している動物はリスザルなどのサル類、そして、爬虫類や両生類も検査します。2006年12月にはアジア初のカエルツボカビを発見し、その後、両生類の種の保全にも影響するラナウイルスをみつけて研究を続けていますが、各地でみられる動物の異常死、大量死にも随時対応しますので、研究室はさしずめ、動物園のようで、病原体・感染症のハンターを自負しています。

もう1つの病気は、タンパク質の構造異常によって起きるもので、今まで体の構成成分の1つであったタンパク質が凝集して、不溶性の異常なたんぱく質となって、正常な細胞・組織に障害するものです。このグループに入る病気は、ヒトでも難病として取り扱われている厄介は病気が多いです。そのため、動物のミスフォールデング病を研究することで、動物を救い、ヒトを救うための成果を上げたいと思っています。

前の大学、研究室の2017年度研究テーマは、チーターのアルツハイマー病、チーターの腎臓疾患、コオロギの赤染病、カエルのラナウイルス、リスザルのエルシニア症、犬の黄疸の新規検査法の確立、ハダカデバネズミやタマリンのヘモクロマトーシス、ヒキガエルの腹水病、在来カエルツボカビの病原性の検討、慢性被曝の小型サンショウウオへの影響、などを行っていました。図:左からヒト、モルモットの乳腺腫瘍、カエルツボカビ症(カエルの皮膚組織標本)

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