創薬学講座

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創薬における獣医学の重要性

身体の機能が何らかの原因で異常となり、正常状態から逸脱した状態が疾病です。薬はこの異常の原因に作用して身体の機能異常の緩和あるいは正常化を助ける物質です。創薬研究とはこのクスリを創製するための研究活動で、創薬科学とはその創薬研究全般を取り扱う複合的な学問です。したがって、生化学、分子生物学、細胞生物学、薬理学などの生物系の学問は無論のこと、有機化学、計算化学、天然物化学、物理化学など化学系の学問も含めた学問領域横断的な融合が必要不可欠です。最近では、ゲノム科学、再生医学や幹細胞研究、情報技術(ICT)の進展が目覚ましく、これらの創薬への活用の重要度がますます高まっています。

また、基礎研究とその医薬品としての実用化の間にはいわゆる「死の谷」が横たわっていると言われて久しく、アカデミアでの基礎研究成果を実用化へといかに橋渡しするか、産官学を挙げてのさまざまな取り組みが推進されています。

このような創薬科学を取り巻く状況において、獣医学及び獣医研究者の果たす役割は極めて大きいものがあります。例えば、薬の開発においては、まずは対象とする疾患の病因を探り、創薬標的を絞らなければなりませんが、獣医学における基礎研究や薬理学的研究から新たな病態の解明、新規創薬標的の同定に至る可能性があります。また、ヒトでの有効性と安全性を予測する上で動物での試験は必須ですし、ヒトと動物のギャップを埋める新たな実験法やモデル系の開拓による臨床予測性の向上も重要です。また、最近では経済のグローバル化やライフスタイルの変化によって、動物を起源とする病原体のヒトへの感染や薬剤耐性菌の感染が問題となるケースが増加しています。これらの課題に取り組むには、ヒトと動物の生理学、薬理学、感染症などの知識と研究が欠かせません。

以上のように、獣医学領域における基礎及び臨床研究は、病因の解明や創薬標的の探索、研究成果のヒト医療への橋渡し、人獣共通感染症の制御など、生命科学分野、創薬分野において極めて重要な位置を占めています。薬理学、感染症、トランスレーショナルリサーチなどに関する教育、基礎研究を通じて、生命科学分野及び創薬分野を支え、さらには将来を牽引できる獣医研究者の養成、基礎研究成果の実用化応用の推進に取り組みます。

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