竹谷 浩介講師

研究内容

高感度リン酸化解析法を用いた腎細動脈の研究
 生物の体の中で起こる現象は細胞内外で起こる化学反応の総和であり、一つ一つの化学反応は様々な仕組みにより適切に調節されています。その仕組みの一つとして「リン酸化」と呼ばれる化学反応があります。リン酸化は様々な生命現象でスイッチのような役割を果たす化学反応で、酵素などのタンパク質の機能を調節する働きがあります。例えば、我々の研究グループが主に研究している平滑筋という筋肉では、筋肉が収縮するための力を発生するミオシンという分子モータータンパク質がありますが、この分子モーターが動くか止まるかのスイッチとしてリン酸化反応が関わっています。そのため、このスイッチのON/OFF(専門用語でいうと分子モーターのリン酸化と脱リン酸化反応)の調節に異常が発生すると、様々な平滑筋関連の疾患に繋がります。

 我々はこの分子モーターのリン酸化状態(スイッチのON/OFF)を測定することで、平滑筋の生理機能や疾患の原因の探索を行っています。特にこれまでリン酸化の測定が困難であった腎細動脈などの微小な平滑筋(単離した腎細動脈はまつ毛の約1/10の太さ(図1))を我々が新規に開発した超高感度な定量解析法を用いて解析を行っています。

図1単離したラット腎細動脈

 

 腎細動脈(図2)は腎臓で濾過される血液の量の調節に非常に重要な役割を果たしています。腎細動脈は様々な生理活性物質により収縮したり弛緩したりしますが、最近我々はそのうちの一つエンドセリン1という血管収縮ホルモンが腎細動脈平滑筋細胞に作用すると異常なミオシンのリン酸化を引き起こすことを見つけました。この異常なリン酸化が腎不全を引き起こす一因になるのではないかと考え、現在研究を行っています

図2 腎小体と腎細動脈

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